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    209.「イノベ家の一日」(4月3日)

政府が目指すイノベーションが達成されると、我々の日々の暮らしはどのように豊かで便利になるのだろうか。

今から約20年後の、とある家庭(イノベ家)の一日が首相官邸ホームページのイノベーション25戦略会議中間とりまとめの中に記述されている。右のイラストはそこからの引用である。イノベ家の一日http://www.kantei.go.jp/jp/innovation/chukan/inobeke.html

 

イノベ家は祖父母と父母、それに2人の子供の3世代同居世帯である。加えてもう一人、というか一台、家事をこなすイノベーという名のロボットも重要な家族の一員である。

この「イノベ家の一日」では随所にテレワークについて言及されているのが興味深い。例えば、父親の会社の半分は在宅勤務をしているので通勤も楽になったとか、母親は出産・育児支援制度とテレワーク制度の活用により現在まで会社に勤続中とか。面倒な家事の一部はイノベー君がやってくれる効果も大きいようだ。

確かに急速な高齢化社会ではこのような家事ロボットに技術革新への期待が大きい。そのほか、技術革新ネタとしては、この時点で開発中というCO2をエネルギー源とするという自動車も夢があっておもしろい。いずれにしろ20年後の世の中は大きく変わっているに違いない。逆に20年前を振り返ると、当時はインターネットもケータイもなかったのだから。しかし、このような技術革新によって我々が幸福になったかどうかは別の問題であろう。その一つの問題は少子化である。子供が急激に減っているのは、厚生大臣の言葉ではないが、社会が決して健全な状態ではないのである。 疑い深く見るとイノベ家は果たして標準的な家庭なのだろうか、ここに描かれた社会は実現可能なのだろうかとの疑問も少なくない。そもそもイノベ家の年頃の二人の子供はこの2−3年の間に生まれていなければならないのである。 

技術革新の成果を示した理想の生活を描くという意味では現実味が乏しくなるのは半ば当然ではあるが、現在、我々が直面している少子高齢化、環境問題、過疎過密、そして格差問題との落差は大きい。これらの問題は20年前と比較するとむしろ悪化している。その解決の鍵はIT活用にあることは確かではあるが、現在求められているイノベーションは人間重視の制度や社会を作ることや、我々の働き方や意識を変えるという意味での革新であるに違いない。(4月3日)