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    79. 「リナックス型社会」

前回、PPKについて書いたが、実はこの話、先日、軽井沢にて開催された日本テレワーク学会シンポジウムの基調講演にて田中康夫長野県知事からきいた話をもとにしている。

この基調講演の題名は、「軽井沢におけるSOHO・SOBOタウン構想について」(注)というものだったが、PPKを含め前段の話がおもしろかった。 まさに自由奔放、言いたい放題ではあったが、日本社会が抱える課題に切り込んだ内容だった。  一つは、ウィンドウズ型社会でなくリナックス型社会を目指すべきだとの主張である。つまり、中央集権型でなく、自律分散型社会をめざしている。  今の世の中、どこもかしこも現状追認の姿勢が目立つとのことで、これを政官財学報の現状追従ペンタゴンと称していた。報は報道、学は学者である。 政府の審議会などで現状容認の御用学者が多いと嘆く。 作家だけあって、言葉の遊びやたとえが上手である。 旧来の知事と違い、周囲のしがらみがないから何でも言いたいことが言える面はあるが、結構当たっている。山小屋イメージ

地方と国の関係については毎度のことであるが、中央ゼネコンと結びついた「はこもの」重視の補助金行政のあり方を鋭く批判していた。 地方では補助金が減る結果になるから、色々工夫して支出を進んで減らすようなインセンティブが働かない。 学校も道路も改修や補修によって事業規模を小さくして節約するより、無駄であっても新築や新設によって規模を大きくする方が国の補助金がでるから、こちらを選らんでしまうとのこと。 ダムもしかりである。

それから、もう一つ、軽井沢の町の景観保護についてもとりあげた。 なんでも長野県と県境を接する群馬県側の傾斜地に大手ゼネコンが高層マンションを建設予定があるとのことで、軽井沢の大切な資産である景観や自然環境保護の点から田中知事らは反対している。 ただし、真っ向から反対するのは法律的にも簡単でないから、住民からの声をあげてもらって圧力をかけていくとのこと。 確かに、我々日本人の景観保護についての意識は低い。 どこの町も金太郎飴のように同じであり、美しくない。 ど派手な色のビルや看板、それに電柱や電線。 司馬遼太郎さんは「街道をゆく」の中で、歴史的建造物のすぐ隣に不細工な近代ビルが建つことに、日本人の美意識はどこへいったのかと嘆いていた。 これでは海外からの旅行客が増えないのも当たり前である。

この基調講演、私どもとしたら本論が聞きたかったのであるが、残念ながらその前にタイムアップとなってしまった。 知事のいつものことと主催者側の弁であった。(7月16日)

(注) SOBOとは、Small Office Besso Office の略。 年間を通じて軽井沢の別荘の利用率を高めるために、別荘向けの各種出前サービスの提供を始めた星野リゾートの社長さんが造った言葉であるようだ。