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    78. 「PPK」

PPKという言葉を知っていますか。 化学物質の含有率(PPM)でもなければ、国連の平和維持軍(PKO)でもない。 健康で長寿を全うすることをいう。 ピンピンコロリの略である。 元気に長生きして、ある日、誰の世話にもならずにポックリいくという、およそ人間の理想的な生き方、いや死に方を表わしたものである。

この言葉の出自をたどると、中央アルプスと南アルプスに囲まれた伊那谷南部にある高森町という小さな町にあるらしい。 長野県生まれの言葉なのである。田舎の風景イメージ

知っている人は知っているだろうが、長野県はお年寄りにとって模範的な県である。 平均寿命は男は全国1位、女は3位である。 在宅死亡率は約20%で全国1位。 そして、老人医療費は全国第47位、すなわち最低なのである。 つまり、PPK率が第1位ということになり、長野県民が誇りにするわけである。

そこで長野県がPPK率1位なのはどうしてかという疑問がわく。 理由としてはいくつか考えられるだろう。 一つは教育県であり、医療や健康についての県民の意識が高いためであるというもの。 意識だけでない。 それを町ぐるみで実践しているのである。 南信州のこの町では、「寝たきりにならない」「寝たきりにさせない」にはどうしたらいいかと考えた。 そして、心身ともに健康でいられる期間をのばすために体力づくり運動を考え、全町民が取り組んだのである。 PPKはその運動の合言葉だった。

また、長野県は岩波書店や筑摩書房が出た議論好きで理屈っぽい人々が多い県である。 理屈や議論も健康にはいい。 始終使っていないと錆びがでて、やがて動かなくなるのは、機械や我々の体だけでなく、頭脳も同じことである。 頭を使うことがボケや老化の防止になることは医学的にも証明されている。 思ったことを何でもいうのは健康に悪いストレスを減らす効果もあるだろう。

ストレスといえば、緑や澄んだ空気などの恵まれた自然環境もこれを減らすにはいいに違いない。 先日、伊那市のある方は空気が薄いから有害な活性酸素が少ないのではとも言っていた。 おもしろい仮説であり、まさに長野県人の理屈っぽさの表れとみてしまった。 (7月14日)