前々回、ワシントンの桜について書いた。この桜が東京からのプレゼントであることは日米両国でよく知られていることであるが、その返礼として、ハナミズキが日本に贈られたということは余り知られていない。
現在、日本ではハナミズキは人気の高い樹木である。陽気が良くなるちょうど今頃、街路にも、公園にも、そして住宅地の庭木としても、至るところに、白やピンク色の花(正しくは総苞)を咲かせている。
いかにも外来種に見えるが、本邦初のハナミズキは、東京よりワシントンに送られた桜の返礼として、1915年に、米国農務省の職員が、白のハナミズキの苗を日本に持ってきたものであるとのこと。
その最初の株は日比谷公園や新宿御苑などに植えられたようだが、敵国からのプレゼントであるということもあって、行方不明の憂き目に遭ってしまった。その後、生き残りにほぼ間違いないという原木1本が見つけられ、今も東大付属の小石川植物園にある。
このハナミズキは米国ではドックウッド、つまり直訳では犬の木と言われる。そこで、hot dogではないが、花弁の形が犬が出す舌に似ているからかと思っていたが、ハナミズキの皮の煮汁で犬のノミ退治を行ったことによるらしい。このドックウッドはワシントンに隣接するバージニア州の州花でもある。
初めて海外出張したバージニアにて、森の中を抜ける小道の両側を覆うハナミズキの大木が、5月初旬の陽光に眩しいばかりに輝いていたのが思い出される。
(4月25日)