去る3月末に、経産省から「新型インフルエンザ対策について」と題する文書が公表され、企業等の団体は、厚労省作成の対策ガイドラインを参考に必要な対策をとるように求められることになった。
いわゆる鳥インフルエンザは深刻な状況にはなっていないものの、いったんヒトに感染すると免疫を有していないため世界的な大流行になることが心配されている。
1918年から19年にかけて大流行したスペイン風邪では全世界で4千万人が死亡し、日本でも2300万人が感染し、39万人が死亡している。つまり、世界大戦に匹敵する死者が出たのであるが大戦争の惨禍に比べ、それを知る人は少ない。リンドバーグが大西洋単独無着陸飛行に成功したのは1927年だから、それ以前の出来事である。航空機などの交通機関が発達した今日では、感染のスピードは当時と比べ比較にならないほど急激であることが予想される。反対に衛生面や情報面も大きく進歩してはいるが、映像などで深刻な事態が繰り返し報道されるようになると不安や恐怖が増大してパニックになりかねない。
ことにわが国では、人口過密な大都市部では満員電車での通勤、対面での会議など、空気伝染する機会が多いから、一旦発生すると大流行する危険がある。そこで、多くの人が集まって活動する企業等の団体では、感染の程度(フェーズ)に対応して、予防などの適切な対策がとられるように準備しておくことが大切なわけである。
このガイドラインには、そのような対策として、在宅勤務、電話会議やビデオ会議の利用、ラッシュ時の通勤回避などを検討しておくことが勧奨されている。今後、各企業は、このガイドラインにもとづいて、手順書や従業員への啓蒙などの措置を行う必要がある。 そして可能ならば、実際に訓練を行っておくことで万一、発生した場合に円滑に機能することが確かめられるだろう。更には、新型インフルエンザのみならず、突発的な重大事故などにも対応できるように日常業務の一部に組みこんでおくことが望まれる。
このような対策を準備することは近年、重要性が指摘されている事業継続性計画(BCP)においても重要な意義があるだろう。(4月25日)