9月29日(金)の臨時国会の冒頭、阿倍新首相の所信表明演説が注目された。
何しろ劇場型といわれた小泉首相の後を継ぎ、初の戦後生まれの宰相の登場であるから当然である。その演説の中身はカタカナ言葉や形容詞が多く具体性に欠けるとの声もあったが、演説の性質上やむをえないところか。むしろ、活力、自律、自立、規範といった言葉に実感があり、力があった。
何しろ積みあがったもろもろの借金は国と地方で1千兆円に届くかという借金大国である。そのうえ人口は戦争の一時期を除き、歴史上初めて自然減を記録したというから、日本国はまさに「峠」にさしかかっている。そこで今後も成長を続けるには、ニートの若者は無論のこと、働ける者は働ける仕組みを作ることが何より大事である。それには我々の考え方の転換が求めれられている。
かつて冷戦下の米国で弱冠43歳で大統領に就任したケネディは、その就任演説で次のように述べている。
「国家があなたのために何をしてくれるかではなく、あなたが国家のために何ができるかを問おうではないか。」
我々一人ひとりが次世代のために今、何ができるかが問われている。
その処方箋の一つは、阿倍首相が演説の始めの方で述べたテレワークかもしれない。テレワークが首相演説で言及されたのは初であり、それも所信表明であるから画期的である。
すでに米国ではパパブッシュの時代に議会でテレワークがしばしばとりあげられるようになったから、わが国では遅れること約15年ということになる。米国と労働慣行や環境が大きく異なるから違って当然ではあるが、現在では人口減少や首都圏への一極集中問題を抱えるわが国がより必要とする働き方である。加えて人材以外にこれといった資源がないから、知恵と時間をうまく使って働くことが重要だ。その延長線上にはインド人や中国人などとネットで共同作業もあるだろう。
最近、短期間に普及した言葉にクールビズがあるが、これを機にこのカタカナ言葉がはやってほしいものである。クールビズでは、その合理的な服装に慣れてしまったら、もはや戻ることはないであろう。しかし、その普及には小泉首相が率先してノーネクタイを通した効果が大きい。このようなトップによる一貫した姿勢が大事である。
かといって首相にテレワークをしてくれというのは酷であろう。むしろ、国会で付き合い残業の多い議員さんに、町にでて意見を聞いたり、ネットで議論という働き方をおすすめしたい。(10月6日)