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    195. 「テレワークは思想」 (7月18日)

「メタルカラーの時代」などの著者であり、ノンフィクション作家の山根一真さんが、以前、日本テレワーク協会個人賞を受賞された際の記念スピーチで述べた言葉である。テレワークは思想

氏は、世界を股にかけ活躍されている元祖モバイルワーカーである。小型の通信端末や事務機器を収容した鞄を持ち歩き、どこでもオフィスを実践している、テレワーカーの鑑といえる方である。およそ通信と縁がないと思われる離島でも、砂漠でも、熱帯雨林でも、書き上げた原稿を、あらゆる手段を駆使してリアルタイム伝送することを習慣にしている。例えば、20回ほども訪ねたことがあるアマゾン奥地では、日本とちょうど地球の裏側にあたるので、その通信には、主に船舶や自動車などの移動体との通信に利用されているインマルサット衛星用の可搬型通信装置を利用したとのこと。私どももこのインマルサット衛星通信に関わった経験があるので大変、興味を持ってお話をきかせて頂き、この言葉にも共感したことを覚えている。

テレワークとは日本テレワーク協会によると、「情報通信を利用した、時間や場所にとらわれない柔軟な働き方」とあるように、労働基準法などの法律により厳密に定義されている言葉ではない。つまるところ、テレワークとは我々の働き方の一つに過ぎないのである。しかし、より広義には氏の言葉どおり「思想」であり、我々が思い描く「理想」と思うのである。

この言葉で思わず連想したのは、誰が言ったか忘れたが、「インターネットは思想」という言葉である。インターネットとは自律分散型のコンピューターの間で情報を伝送していくネットワーク方式なのであるが、インターネットの意義はそのような狭義の技術用語の域にとどまらない。その根底にある「自律分散」という考え方は、インターネットに関する新技術の開発の進め方から組織の運営などあらゆる面で基本になっている。そこで、思想であり理念であるというのである。

自律分散の対極にあるのは中央集権的な階層構造 である。現在、ベストセラーになっている「ウェブ進化論」にも描かれているように、ネットを通じて何千、何万という人々やコンピューターが協同作業を行うことで、新世代OSのような極めて複雑で大規模な仕事を行うことも可能になっている。その基盤をなしているのがインターネットであり、その底流には自律分散という思想がある。テレワークも、個々人の能力を尊重して、分散環境の中で仕事をするということだから、「インターネット的な働き方」という思想といえるのではないだろうか。(7月18日)