先日のBS-iでのお話。
北海道に本拠を置くお菓子メーカー六花亭 小田社長のインタビュー番組である。北海道土産で名高いマルセイバターサンドなどを製造販売している会社である。我が家の大好物ゆえ、どのような会社か興味を持っていたが、やはりユニークなのである。
まず、この会社の60箇所以上にのぼる事業所や店舗はすべて道内にある。これだけ支持されているのだからなぜ全国展開しないのかと疑問に思うが、全く考えていないとのこと。それには日持ち、原料調達やそれに人材の制約があるからだ。経営方針も単純に企業規模を大きくすることを志向していない。地元に楽しまれ、道内観光みやげとして楽しまれることが何より大切との信念を創業以来、貫いている。それによって、一個百円前後という「おやつ感覚」で味わえる新商品を次々に開発し、世に送り出している。 (右は六花亭HPより)
2代目となる現社長は北国育ちらしい柔和な面持ちであるが、なかなか頑固のようである。従業員とともに歩む姿勢が基本としながら、ワンマンのようであり、例えば、約1300人の全社員の人事は全て社長一人が行っているらしい。この規模だと社員全員の顔と名前が一致するという。社員の適材適所人事を全員の名札がかかった白板を見ながら考える。その材料になっているのが社員の毎日のレポートである。社員全員が毎日、その日に起こったことや悩み事、改善点など何でもいいから1枚の小さな紙に書いて出すように求めている。そこで全部集めると5−6百枚にもなるが、社長はこの紙束を毎日、午前中一杯かけて目を通すのを日課にしている。これによって社内で何が起こっているか、社員がどんな問題を抱えているかかがわかるのだという。電子メール全盛の昨今、このスタイルを何十年もの間、一日も欠かさず続けているのがこの会社、この社長の流儀なのである。
社長によれば、牛乳や野菜などの豊富な原料だけでなく、作る人もこの土地の人間が一番という。十勝の人は札幌のような都会人と比べ社会性や派手さには欠けるが、実直で粘り強い気質が菓子作りに向いているらしい。土地と人、それに伝統があいまったうえで、たゆまない努力を続ける地元密着型一流企業の典型である。話をきいていて、あのバターサンドがまた食べてみたくなった。(6月18日)