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    187. 「ボビーマジック」 (11月26日)

ロッテが、パリーグプレーオフ連勝の余勢を駆って、日本シリーズでも阪神に圧勝し、実に31年ぶりとなる優勝を遂げた。更には初代アジアチャンピオンの座も手に入れた。

パリーグで長年、最下位グループに低迷していたから、今年のロッテの日本一を予想した人は極めて少なかっただろう。確かに、昨春、バレンタイン氏がロッテ監督に再度就任した当初は10連敗を喫し、早々と戦線から脱落してしまった。中には26対0というプロ野球とは思えないみっともないスコアの試合さえもあった。その時には監督自らマウンド近くで帽子をとり、球場のファンに申し訳ないと深々と頭を下げたのが印象的だった。

あれから2年にも満たない。変われば変わるものである。このようなダメ球団が劇的変化を遂げたのはなぜだろうか。ロッテの選手が他球団に比べて優れていたからだろうか。選手の年俸やドラフトでの評価などの客観的なデータを見る限りそうとはいえないのは明らかだ。やはり優勝に導いたのは監督の手腕にほかならない、ボビーマジックといわれる所以である。本人はマジックでもなんでもないと否定しているが他のチームの監督にない優れたマネジメント能力を持っているに違いないボビーマジック

日々厳しい競争にさらされている世の経営者にとって、団体競技、特に野球の世界には、企業経営や人事管理の知恵が凝縮されているように見える。それらは、ライバルを研究し、 には自チームのひとり一人の実力や特性を把握し、長所を最大限に引き出すのがまずもって重要であるが、その能力に長けているのだろう。日産を見事に再生させたカルロス・ゴーン氏もそうだが、バレンタイン監督は日本人でないゆえに、我々より日本人の特性を良く知っているのかもしれない。我々は総じて真面目であるが、個の力が弱く、周りやムードに流されやすい。しかし、個人の潜在能力は高く呑み込みが早いから、自信を持たせ、方向を示してやると、あとは信頼してまかせればいいのだろう。

企業の管理者もスポーツと同じで、根性や精神が優先され練習方法や戦術面が科学的でないことが多い。がみがみと頭ごなしに叱る。あるいはプレイングマネジャーだからと、日々忙しくして肝心なマネジメントをさぼっている。

バレンタイン監督は一人ひとりに声をかけ、家族のプライベートな面まで知っているという。選手を適当に休ませ、交代してチーム全員の力を使うのが上手である。

最近、バレンタイン監督をとりあげたNHK番組で解説者がおもしろいことを言っていた。監督は一方的な勝ち試合にこそ多くの選手をかわるがわる投入するのだそうだ。それによって、皆が勝利に貢献したという意識が高まり、やる気が高まるそうだ。逆に一方的な負け試合は逆とのこと。

ファンサービスもしかりである。26番目のチームメートがどれだけの力になるかを良く知っている。日本で遅れているのはマネジメント能力である。部下の自律を高め、やる気を引き出すことが求められている。 (11月26日)