NHK BSで放映中の韓流大河ドラマ「チャングムの誓い」が大詰めを迎えている。と思ったら、昨日よりNHK総合（地上波）での放映が始まったところである。このドラマ、１時間で全５４回という長丁場であるが、韓国ではあの「冬のソナタ」を凌ぐ、５０％以上の平均視聴率を得た空前の人気番組である。
日本でも多数の視聴者を得たとことで、二匹目、いや三匹目のどじょうを狙って地上波での再放送になったわけ。その視聴者とは、女性ファンに偏っていた冬ソナに対して、幅広い年齢層に分布しており、特に４０代から６０代の男性も多いという。小生もその一人であり、昨年よりすでに合計５０時間、よく見たものだと我ながら感心してしまう。
幼い時に両親と死に別れ天涯孤独となったヒロインが、母親の遺言に沿って宮中の女官となり、最後には王（皇帝）の主治医にまで登りつめるというサクセスストーリーなのであるが、毎回の展開が家族で楽しめる大衆娯楽番組として実によくできている。舞台は１５世紀から１６世紀前半にかけての朝鮮王朝、しきたりで塗り固められた封建的な宮廷社会である。このドラマは全くのフィクションでなく、史実をベースにしているとのこと。脚本家は、とある歴史書に、王の主治医となったチャングムという女性がいたというわずか数行に過ぎない記録から、想像力をふくらまして書き起こした。
子供のころからいじめの連続である日本版「おしん」であるが、宮廷料理から医食同源を旨とする東洋医学のエッセンス、それに成就されない恋物語までバラエティ番組さながらの多くが盛られている。NHKの宣伝文句では波乱万丈、ハラハラどきどきの連続であるが、適当なタイミングで喜劇役者が登場して笑いを誘う。このヒロイン、知性と教養を備えたスーパーウーマンなのであるが、そんなスーパーウーマンが何故と思う無鉄砲で辻褄があわない行動をとる。 それが、理性と感情の二面を持つ人間であり、だからドラマなのである。視聴者の心理をついたこのようドラマを次々に世に出しているのは韓国パワーを感じる。映画学校など国をあげて人材を養成し、文化を輸出していくのは国策でもあるのだろう。ひるがえって日本のテレビ番組、特に民放をみるとお笑いタレントとクイズ番組に占拠されている。ドラマは制作に時間がかかるし費用対効果が悪いようだ。
まあ、製作元はどこであってもおもしろいものはおもしろい。
前週は、奴婢という低い身分である女医チャングムを王の生命を預かる主治医にしたいと王が言い出す場面。居並ぶ高官たちはあっけにとられ、前例になく国の制度の根幹を揺るがすといって猛反対するが、「自分の命を守ってくれた者を主治医にして何が悪い」と叫ぶ。性別でなく能力がある者を処遇するという。前例のない衆議院解散と女性刺客ブームに沸いた小泉劇場がだぶる。今、まさに、能力ある女性活用が必要な時期でもある。美貌と秘められた強靭な意志を併せ持つチャングムを演じるイヨンエの魅力も加わり、来年は大ブーム到来の予感である。 （１０月８日）