筆者がテレワークという言葉を知ったのは数年前、米国バージニア州にある通信会社の小さなビジネスユニットにてマネジメントをしていたおりである。そこではファックスの蓄積交換サービス、いわゆるFAX-VAN事業をやっており、全米の企業顧客に対して24時間のサービスを行っていた。20名弱のスタッフの大半が米国人の小規模なユニットではあったが、顧客への多様なニーズに応えるためソフト開発から交代制(シフト)勤務での運用までを行っていた。
設備としてはUNIXベースの分散型交換システムを使用していたが、使用する機器が多いのでたびたび故障に見舞われた。そんな時はシフト勤務の運用者が初期対応するのだが、深刻な障害の際は開発部門の人間、とりわけそのシステムを熟知するBさんの応援が必要だった。このためBさんは常に携帯電話を持ち歩き、深夜であっても車で駆けつけ修理する。 ある日、Bさんより、自宅のPCからシステム状態がモニタできるので、それを使った「部分テレワーク」を行いたいという。状況によってはシフトの人間に電話で指示すれば、オフィスに駆けつけずに済むから対応も早くなるとのこと。そこで、まずは試験的に許すことにした。確かにその効果はあり、結果としてBさんの過長労働は多少緩和されたし、顧客への応対も早くなったと思う。加えて自分が駆けつけて何でもやってしまうスタイルから、リモートで部下に指示を与え、後処理をまかせるようになったので教育効果も大きかったようだ。
Bさんの場合はエグゼンプトワーカーであり、時間外勤務をどうするかといった問題から避けられたし、仕事の成果を年末に評価し、翌年の処遇をきめる年俸制であったこともテレワークを容易に認めることができた大きな理由であった。 (2月12日)