日経新聞の1月4日朝刊記事によると、日立は情報管理強化のためハードディスクを内蔵しない新型のモバイル端末を開発し、同社の従業員を対象に順次導入していく計画という。
PCが小型で高機能になり社外から社内ネットにリモートアクセスする環境が整ってきたのでモバイル端末を持ち歩くケースが増加しているが、情報セキュリティの確保に不安があった。盗難や置忘れによる重要データの紛失事故は後を絶たない。そこで、従業員の教育を徹底して行うとともに、万一事故が起こっても被害を最小限にするためにパスワード設定やデータの暗号化などの対策がとられている。
しかし、それでも事故をゼロにすることはできない。それに一度紛失した情報を取り戻すことは極めて困難である。端末が増えてくるとOSやアプリのバージョン管理が苦労である。ウインドウズ系ではセキュリティホールが多いから、ウイルス対策で年中、頭が痛い。そこで端末には一切、重要情報を保管しないどころか、アプリケーション処理も全てサーバー側で実行するようにしたら、これらの心配が一挙解決するということで真剣に検討されているわけである。
本年4月から本格適用される個人情報保護法も情報管理強化の背景にある。これは、オラクルやサンマイクロがかつて言っていたネットワークコンピュータの考え方に近いし、さらに遡れば、かつてのホストコンピュータとダム端の関係にも似ている。しかし、大きく違うのは、かつては、ホストでしか高度の処理ができなかったからやっていたのに対して、現在は端末側でも高度処理はできるが情報管理といういわば人間的な側面が大きな契機になっていることである。ネットワークコンピュータの場合は記憶装置をなくせば端末を安くできるというコストメリットが大きな売り物だったと思うが、普通のPCの価格が急激に低下したことで魅力がなくなったのだろう。それに当時はネットワークの普及がまだまだだった。
ここにきて可能になったのは、いつでもどこでも高速で社内ネットに接続できるようになったという通信インフラの進歩が大きい。経営者もこれで枕を高くして眠ることができるのではないだろうか。 (1月14日)