最近、フリーアドレス形式のオフィスにする大企業が増加している。
富士通ソリューション、日本IBM、サンマイクロシステムズなどである。フリーアドレスとはオフィスに個人専用の机や椅子をなくし、どこに座るのも自由という住所不定の座席である。このようなオフィスでは自分専用の文房具や書類を保管するためにロッカーを置くのが普通だ 社員は毎朝、ロッカーからノートパソコンなどの道具を取り出し、好きな場所にこれを持っていき仕事を始める。机の前には電源コンセントと社内LAN接続用のジャックが標準でついている。
これまでが定住型であるとすればフリーアドレスはさしずめ遊牧民型オフィスである。個人用ロッカーはあるにしても並みのコインロッカー程度の大きさに過ぎないから、個人所有の紙を徹底的に削減しなければならない。仕事が終わると机の上をきれいに片付けないといけない。つまり必然的に情報電子化による知識の共有化が必要となる。個人情報保護法の本格運用が明年4月から始まるが、情報管理にも効果的である。個人所有の紙を減らして整理整頓をしいられるからである。
ただし、慣れるまでにある程度の時間がかかるだろう。こんな話を聞いたことがある。自席の場合、座った瞬間、書類やメモ類に囲まれるので自然に前日の記憶がよみがえるので仕事が始めやすいが、フリーアドレスではその記憶がないので取り掛かるのに時間がかかるとのこと。そうかもしれない。長きにわたり通勤電車に揺られ、固定席にすわって仕事を始めるという「パブロフの犬」のような習慣が染み付いている。 それに机と椅子はステータスであったし、自宅に加えて会社でも固定的な居場所がなくなるとなったらストレス増加が懸念される。一方、若い人たちは慣れるのが早いだろう。というのは学校がそうだったからだ。教室では自分の席がないし荷物はロッカーの中である。図書館も学生会館も当然ながらフリーアドレスである。それにフリーアドレスであれば、運がよければ景色のいい窓際に座ることもできる。
要は慣れではないか。場所を変えることはそれだけで新しい刺激がある。いずれ時間がたつと席が固定化する傾向が見られるようであるが、それでもいいのである。PCが小型になったから個人所有の書類が減れば机自体の面積も少なくできる。スペース効率が上がり執務スペースを大きく削減できる。そこで浮いたスペースを会議室や共同作業の空間やリラックスや談笑する空間などに振り向けるのである。
都心には今後とも新規のオフィスビルが次々にオープンする予定である。移転やリニューアル時期にあわせて思い切ってオフィス機能の全面更新とIT化を進めるべきである。 (11月19日)