米国の連邦政府機関ではテレワーカーが多い。 国防総省や財務省などの機密情報を扱うことの多い部局でさえ、数万人という数の職員がテレワークをしている。 機密文書を扱うという意味では特許審査官も同じである。 米国特許庁(USPTO)では商標部門の多くの審査官がTrademark Work@Homeという在宅勤務制度を使って、自宅で申請書類の審査をしている。
政府機関でのテレワークにはいくつかの目的や効果がある。 特に連邦政府機関が集中している首都ワシントンでは朝晩の交通渋滞が劣悪であることから、その渋滞緩和や通勤時間削減が理由の一つである。 加えて、優秀な職員のつなぎとめ(リテンション)も大きな理由になっている。
米国では政府機関職員といえども、好条件の転職先があれば、すぐにキャリアアップしてしまう。 つい先日まで、政府機関に勤めていた人間から別の名刺、例えばロビイング活動を行う民間団体の名刺を頂くことは珍しくない。 このような人材流失を避けるために民間 企業では昇給や昇格の手を使うが、政府機関ではそうはいかない。 民間企業にはテレワークなどの柔軟な勤務形態が選択できることもワーカーにとっては魅力である。 そこで政府機関は、せめて勤務制度を工夫することで引き止めようとするわけである。
特許庁審査官のテレワーカーは、オフィスに出社するのは週に1日程度であるからオフィスコストも削減できる。 平均で5人に1デスク分しかなく、出社前にオンラインでオフィススペースを予約する方式になっているという。
特許庁審査官の仕事は高度で専門的な知識を要するが、文書や情報システムへのアクセスが中心の典型的なエキスパート型職種である。 集中力や思考力を要するが、作業進捗管理や成果の評価はやりやすい。 つまり大変テレワークに向いている仕事なのだろう。 (7月8日)