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    131. 「奥様は魔女」

TBSの金曜日のトレンディーTVドラマ「奥様は魔女」が終わった。 米倉涼子のアリサ役をはじめ、なかなか好評だったようだ。

言うまでもなく、このドラマは米国で大ヒットした同名番組のリメイクである。 オリジナルは米国で1964年から1972年までの8年間放映され、その間の平均視聴率が23%というお化け番組であったとのこと。 日本でも放送されたのでよく見た記憶がある。 ダーリンと結婚した魔女サマンサが次々に繰り出す奇想天外な魔法もさることながら、明るくほほえましい米国の家庭生活を垣間見てうらやましく思ったものだった。高度成長期の日本がお手本とする米国がまさにそこにあった。箒に乗る魔女イメージ

その後、米国型の消費文化や生活が続々輸入され、次々に実現されていく。 それらの典型はマイカーであり、ファーストフードであり、そして郊外のニュータウンだった。 大量生産されたのは自動車やハンバーガーだけでなく、職住分離のサラリーマンと核家族だった。 “「家族」と「幸福」の戦後史”(注)という本では、その歴史を詳しく分析し、これらの米国型大量消費文化の原型をつくった人物は、世の中にノーベル賞級の革命をもたらしたと述べている。 そのうちの2人はフォードであり、マグドナルドであったのは言うまでもない。 そして、もう一人、大規模郊外住宅地であるニュータウンの原型を設計開発した人物の名は余り知られていないが、ウイリアムレビィットという人物であるとのことである。

マンハッタンの東40キロにあるロングアイランドのじゃがいも畑に建設されたレビィットタウンという町は、氏の設計によるものであり、彼こそフォードやマグドナルドに並び称されるべき人物であるという。

同書によると、現代日本が抱える様々な社会的問題、例えば子供のいじめや不登校といった問題も、ニュータウン化現象と深い関係があるという。 ニュータウンでは地縁血縁を失った住民、人工的に形成された町並みや機能があふれている。 近所の小川や森で泥まみれで遊び、時には喧嘩もできた団塊世代は「奥様は魔女」を見て育ち、ニュータウンに理想の家を手に入れた。 しかし、その子供たちは生まれた時から区画化された小奇麗な町しか知らず、子供たちにしか知らない秘密の隠れ家を見つけることができなくなった。

してみると、このレビィット氏こそ、良くも悪しくも我々日本人のライフスタイルに多大な影響をもたらした人物に違いない。そうですね、サマンサさん。 (4月16日)

(注) 「家族」と「幸福」の戦後史、三浦展著、1999.12、講談社現代新書