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    95. 「CLO」

CEO,CFO,COOといったCなんとかOという肩書きが多くなっているが、CLOはChief Learning Officerの略である。 前回述べたように、米国ではeラーニングを企業戦略の一つと考えるようになったから、その最高責任者を明確にするのは当然の流れである。 組織再編、新製品の導入などの重要プロジェクトを円滑に進めるためにeラーニングの持つ意味は大きく、CLOの役割はそれだけ大きい。

CLOは、企業戦略の達成に必要な人材を強化育成するため、次のような仕事を統括することになる。 まず、必要な能力やスキルを洗い出し、現有する能力とのギャップを明らかにする。これが研修ニーズとなる。 次に、このニーズを満たすような研修計画を立てコースを設計し、研修を実施するのである。 研修の実施後にはその効果を計測し、投資効果を測定する。指導員と相談する人イメージ

このように米国では研修を積極的な投資と位置づけるから、一方でその投資効果、ROIを示すことが求められる。 高い投資効果を得るには、研修を受けさせる人間やコースが選択的になる。 必要なコースを研修効果があがる人のみに受けさせるのである。もっとも、研修を優秀な社員をひきとめるための一種のニンジンとしたいと考える「お家の事情」もある。

一方、わが国では、投資というより全員一律の経費という考え方が主流である。 あるいはOJTという好都合の言葉を借りて、実のところ全て現場まかせで話をすませていた。  集合研修というものがあっても、おしきせであったり、企業戦略や人事施策との関係が不明確であった。 そうしているうちに、社員は会社のプロにはなっても、世間一般で通用するような仕事のプロにはならないという状況に陥った。

今や日本企業も仕事のプロを育てる必要に迫られているので、人材育成にも米国流の考え方をとる企業が増えるだろう。 ただし、日本企業の家族的な特性や、飛びぬけて優秀な人間も少なければ、反対にだめ社員も少ないというワーカーの均一性をも考慮すべきである。 そこで有効なのは、カフェテリア方式ではなかろうか。すなわち、人材育成担当部門は推奨コースと経費について一定のガイドラインを示し、それを選択するのはチームや個人にまかせる方法である。 eラーニングの普及によって、コースの選択肢が非常に多くなったのも追い風である。

話はCLOからいささか脱線したが、わが国にもCLOという肩書きが出てくるとしたら、日本企業や日本人にあった人材育成プログラムを作り、統括してもらいたいものである。 (8月28日)