生活様式が洋風化しているものの、日本家屋には依然、和室が多い。 新築住宅でも和室がいまだに多く、住宅金融公庫の融資を利用した住宅についてのアンケート調査(平成8年度)によると、その9割に1部屋以上の和室がある。 ただし、都道府県別にかなりの差があるのはおもしろい。 多いのは山形県(平均2.63室)、鹿児島県(2.34)が1、2位であり、少ない県は沖縄(0.81)、北海道(1.28)である。 首都圏(1都3県)でも、平均1.55室の和室がある。
他の調査などによると、れれわれは和室を「くつろぎ」や「安らぎ」の空間と考えており、色々な用途に活用しているのがわかる。 家族の皆が思い思いに集まる団欒の場が食卓の場になり、更には寝室にも早替わりする。 また、晴れ間、つまり客間としても利用される。 このように和室の最大の特長は多目的利用ができるということだろう。 勿論、書物を読んだり作業をする場所としても使える。 かつての文豪はもとより、今でも、多くの作家が和室空間を書斎として利用している。
一方、同じ住宅金融公庫の調査で「書斎」の有無を調べているが、これを有していると回答している人は約2割に過ぎない。 子供たちには高機能の勉強机を備えた立派な子供部屋があっても、自分の書斎は多くのサラリーマンにとって未だ夢なのである。
テレワークをしたいのはやまやまだが、オフィスであるからには、机や椅子、それにIT機器を置くスペースも必要だし、その場所がないと思っている人は多いのでなかろうか。 なかには、オフィスイメージにはほど遠い和室ならあるのだがという人もいるだろう。
実はこの和室、IT機器が小型になった今日、週に1日か2日のテレワーク目的であれば、使えるし、優れているのである。 今や仕事の中心は小型のパソコン、それもノートPCで充分だし、プリンターや外部記憶装置も大変小型になり場所をとらなくなった。 通信の面でも無線LANという武器がある。 和室には、電話ジャックがない家庭が多く、通信環境という面では恵まれていなかったが、無線LANであれば、PCをインターネットにつなぐために不細工な配線をしなくてもすむ。 電話は携帯はあるし、ポータブルな無線子機もある。 勿論、セキュリティ対策は万全にしなければならないが、そのツールは出回っている。
和室オフィスの利点はいくつかある。 ひとつは和室のテーブルは割合に広いし、部屋の真ん中におくと、壁からの圧迫感が少ないのが心地いい。 それに静かである。 障子や襖などの自然素材が吸音効果があるからだろう。 服装も場所もステレオタイプのオフィスでなく、個人の好みにあったワークスタイルでいいのである。かえって、オフィスと異なったスタイルの中で仕事をする方が創造性が触発され、生産性があがることはよくある話である。(8月22日)