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    73. 「タナカさん効果」

大学では理工学部への入学希望が増えているらしい。 一つには、昨年、ノーベル賞を受賞した田中さんの影響が大きいのではないか。 そうだとしたらこれは、新たなタナカ効果ともいえるノーベル(経済学?)賞ものの貢献である。

思い返せば昨年は色々な田中さんで沸いた年だった。 なかでも、島津製作所の田中さんの受賞は、ちじみっぱなしの日本に元気を与えてくれた。 かつて太平洋戦争直後に意気消沈していた国民を勇気づけたのは湯川博士のノーベル物理学賞受賞だったが、昨年の田中さんの受賞は新たな形で偉大な効果をもたらしている。ネクタイイメージ

失礼を承知で言えば、我々普通のサラリーマンにとても身近に感じられたのがそれである。 同じような通勤をして、同じようなめしを食っている我々の仲間のような方が受賞されたのである。 隣にすわっているAさんにも似ているから、ひょとすると将来、わが社にもノーベル賞の受賞者がでるかもしれないという淡い期待をもたらしてくれた。  これまでの受賞者の場合にはこういうことがなかった。 雲の上の存在であり、受賞内容もよく理解できなかった。 今回はテレビ等で素人むけに易しく解説してくれたこともあって、田中さんの受賞内容がいかに画期的であるかよくわかった。

ノーベル賞は別にしても、田中さんの人柄にひかれ、彼のような人になりたいと思った若者も多いだろう。 また、自分の息子を理工学部に入れて、人類の役にたつ研究開発をやらせたいと思った親御さんも少なくないのではないか。 受賞後の田中さんの服装や所作も国民の共感を呼んだ。 なかでも、最初の会見での作業服姿が強く印象に残っている。 最もスーツとネクタイが似合わない人という週刊誌見出しもあったが、作業服が最も似合い、そのステイタスをあげた人というべきだろう。 確かに服装は自己表現の一つである。 作業服で会見に現れるというのは、飾り気のなさと同時に自信の表れなのである。

高温多湿のわが国で、相変わらずスーツとネクタイから離れられないのは我々の自信のなさの表れではなかろうか。

 ネクタイといえば、ヤンキースで活躍中の松井選手が、試合後のインタビューでこの姿が多いのが不自然な気がする。 気配りの松井選手であるから、わからないこともないが、野球選手は新庄選手のようにもっと自由なのがいい。 サッカー選手もどこかおかしい。 移動の際には、スーツとネクタイで決めているが、茶髪とアンバランスなのである。 勝手な行動ができないように、ネクタイで縛ってお行儀よくしているよと言っているようである。 茶髪やノーネクタイにもあう遠征スタイルはできないものだろうか。(7月2日)