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    53. 「デフレは止まらない」

90年代からはじまったデフレはますます加速している。 モノが売れない。売れないから価格が下がる。 価格が下がると売り上げが減るから給料が下がり、ますます財布のひもが硬くなる。 いわゆるデフレスパイラルである。 いずれ価格が下がるから今買うより待つのが得と決め込んでしまうので、経済は勢い低迷する。

我々の世代ではデフレはこれまで一度も経験がなかった。 モノの値段があがるインフレが当たり前であり、マイナス成長やゼロ金利は想像すらできなかった。 一年で10%以上も物価や給料が上昇した時期さえあった。うつむいて歩く人々イメージ

なぜなら市場が国内でも海外でも右肩あがりに拡大していたからである。 わが国は低コストで高品質の加工製品を海外に大量輸出することで潤った。国際情勢も日本には有利に働いた。中国などの共産主義国は自由経済のリング外にいたから、所詮我々の競争相手でなかったし、軍需が基幹の米国等では相対的に民需産業が弱かった。 世界各地で起こった戦争もモノの需要を増やすインフレ圧力として働いた。 国内市場も人口が増加したから、作れば売れる時代が続いたのである。

しかし、ベルリンの壁が崩壊しソ連が消滅すると事態は一変する。 共産主義から資本主義へ、軍需から民需への転向組が増え、我々のライバルが一挙に増加した。 数人と戦うのと10人と戦うのではわけが違うのは当たり前である。 国内では少子高齢化によって、消費の王様である若年人口が減る一方で、団塊世代は教育費と住宅ローンで羽交い絞めになっている。

インフレに慣れてきた我々は、今のデフレは一時的でいづれまたインフレ時代になるに違いないとの希望的観測をしたいところである。 しかし、残念ながらあと数十年は無理というのが歴史に詳しい専門家の見方である。 理由は世界情勢である。 米国一国のみ強大になったからインフレ圧力になるような戦争はなく、平和な時代が続くであろう。 更に、IT革命で国境無しである。 堰がなくなれば水は低きに流れるのと同じように、経済が一つになった世界では、モノもサービスも低きに流れるのである。 中国が突如ずっこけるようなことがないと、デフレは容易に止まらないのではなかろうか。(5月15日)