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    52. 「これがニュース?」

仕事柄かもしれないが、最近、各企業が賃金制度を改めたという記事を目にする機会が多い。 A企業が年俸制を全面採用とかB企業が職務別賃金を導入したなどの見出しである。 そして記事の中での決まり文句は、「日本型賃金体系の終焉」である。 確かにそのとおりなのだが、何を今更という気がしないでもない。 もし、欧米人がこの見出しを見たらどう思うだろうか。 (家族主義をとってきた数少ない旧日本型経営の)x社も、ついに欧米型の賃金体系に移行したというようにとるのではなかろうか。

それほどまでに年俸制や職務別賃金は当たり前、逆に言えば、年功や生活給的要素が色濃く残る日本企業の賃金制度はわが国特有のものである。 例えば、初任給の仕組み。 わが国の大多数の企業の初任給は、仕事内容に関わらず大学卒いくら、高校卒いくらと一律である。 同期入社の給料は1円たりとも違わない。大ニュースを宣伝する少年イメージ

一方、米国は新卒であっても給与は職務内容によって決まる。 同じ年齢で同じ大学を卒業しても、職務が異なれば給料が異なる。 言い替えれば、同じジョブであれば、何歳であろうが、男であろうが女であろうが同じなのである

どちらの方が合理的だろうか。

わが国は、職業につくのは就職というより就社だった。 会社は徳川時代の幕府や藩のごとくであった。、長い間、鎖国に守られ、長島さんの巨人軍引退スピーチのごとく、永遠に不滅の存在だったのである。 中途で脱藩する社員もごく少数。 同期の桜は一生のつきあいだから、多少の能力差や成果の差があっても、まずは波風が立たないようにするのが無難。 あるいは人事部の怠慢もあり、全員一律賃金で恨みっこなしだった。

しかし過去10年位の間にこうした企業一家的パラダイムは足元からぐらついている。 磐石と思われていた大銀行などのあいつぐ破綻。 超優良企業でさえ、数年先でさえ継続して存在することを断言できなくなった。 法人とは自然人である人が死んでも、存在し続ける人格と習った記憶があるが、永遠どころか短命が普通になったのである。 一方で人生は長くなる一方だから、終身雇用や年功序列型賃金体系が維持できなくなるのは明らかである。 今年の新入社員は、平均して会社を3回位は変わることを覚悟しなければならないだろう。 自分から進んで転職しなくても、会社の方が勝手に変わってしまうかもしれないのである。 (5月13日)