韓国人も元気だ。 特に、電子機器メーカの隆盛やブロードバンドの普及、これらを基礎にしたニュービジネスの台頭には目を見張るものがある。 ベンチャーは米国の専売特許のような気がしていたが、経営学者のドラッカー博士は近著「ネクストソサエティ」の中で、起業家精神ナンバーワンなのは米国人ではなく、韓国人だと言っている。 ことに韓国人の米国での活躍ぶりを見ていると、氏の感想はなるほどと思う。 筆者もワシントン近郊在住のおりには在留韓国人のパワーに驚くことが多かった。
一つは子供たちの教育。 日本人も教育熱心で有名だが、周囲の韓国人家庭はこれを凌いでいた。 例えば息子たちが通っていた小学校では、選択授業に弦楽器のオーケストラがあったが、その中での東洋人の活躍、特に韓国の子供たちが際立っていた。 学校主催の発表会が学校の講堂やコミュニティホールなどで定期的に開催されるが、そのなかで「トリ」あるいは中心的役割を努めるのは韓国人の子供たちであった。
話は逸れるが、このコンサートはなかなかユニークである。 習いたての子供たちにもスポットが当たるように演出が工夫されている。 演目も特別で、単にドレミの音階をなぞるだけのものさえあった。 それを指揮の先生が大仰な身振りで盛り上げ、観客も割れんばかりの拍手喝さいで応える。 演奏を終わった子供はまんざらでもないという笑顔を見せる。 そのなかに混じって、ソリストとしてセミプロ級の腕を披露するのは韓国人たちだった。 このような子供たちの教育はどうしているのかといえば、例えば近所の家庭では、父親を本国に残し母親あるいは祖父母が子供の教育のために在留していた。 ビジネスで成功した1代目は、2代目を芸術や学問の分野で名を成すように力を入れるらしい。
中小ビジネスでも洗濯屋や車の修理といった生活関係のサービス業で韓国人経営の店が多い。 真面目でハングリー精神が旺盛なことが成功の秘訣であろう。 加えて韓国人の共同体の力も無視できない。 韓国人社会の交流や情報交換の場として重要なのは教会である。 ワシントンDCと隣接するバージニア、メリーランドには、韓国系の教会が2百もあるという。 車で走っているとハングル語の看板をもつ教会をあちこちでみかける。
バージニア州のアナンデールという街ではハングル語がやたら目立つ。 かつては地元住民が読めないハングル語の表示には住民から反対があったそうだが、今は表通りにあふれている。 それだけ、韓国人コミュニティの力が強くなっているわけである。東京の新大久保も似ているかもしれない。
韓国系住民に比べると日本人や日系人は大人しく見える。 ことにワシントン近郊の日本人は、数年経つと日本に戻る駐在員が多いので、片道切符で米国に骨を埋める覚悟で来ている多くの韓国人たちとの違いが目立つ。 彼らの真似ができるとは思えないし、ある面では真似をする必要もないが、そのバイタリティについては我々も見習わなくてはいけない。 (4月21日)