音声読み上げの利用時に配慮して、ナビゲーションをスキップして、コンテンツへジャンプします。
メインメニューへジャンプします。
サイト情報へジャンプします。


ホーム > コラム > 40. 「チャイニーズパワー」
コラム コラム

    40. 「チャイニーズパワー」

近年の中国の経済成長ははすさまじい。 かつて安かろう悪かろうのイメージだった中国製品は、今やわが国と遜色ない品質になっている。 それを圧倒的に安いコストで生産し世界中に供給している。 エアコンやTVなどの主要家電製品では生産台数ですでに世界一のシェアになった。 パソコンや半導体、それにソフトウエアの生産においても発展著しい。 共産党の一党支配下では、市場経済の本格化は所詮無理だろうとたかをくくる向きも多かったが、近年の中国の変貌は革命的である。

経営コンサルタントの大前研一さんは著書の「チャイナインパクト」や「チャイナシフト」の中でその発展の理由について詳しく述べている。 一つは、鄧小平以来、経済特区等による地方分権化が成功したことにあるという。 中国には、沿岸部中心に6つの独立した経済圏が成立しており、世界的にも類をみない規模の産業集積が進行中とのこと。中国の万里の長城イメージ

その発展を支えているのは優秀で低コストの労働力である。 オイルショック後に、日本企業は安い労働力を求めてこぞって東南アジア諸国に生産拠点を移したが、近頃はこれらの国の労働コストが上がったため中国へのシフトが始まっている。 なにしろ日本の人口の十倍にあたる13億もの人間がいて、内陸部と沿岸部の格差が大きいものだから、大陸奥地という泉で湧き出した水の流れのごとく、安価な労働力が沿岸部に押し寄せてくるのである。

人材の質も決して悪くない。悪くないどころか高いのである。日本のお家芸と見られていた金型生産などの超精密加工でさえ強敵となるメーカが現れたという。 製造業のみならず移転が難しいとされていたサービス業でも日本の職場を侵食し始めている。 例えば山東省を中心に集積するコールセンター。ここでは日本国内でのお客様からの各種問い合わせの窓口業務を日本語で流暢に対応している。 仕事に慣れるため数千にものぼる日本の市町村の名前を必死で覚えるという。

先進的な企業のマネジメント層には通称、海亀族と呼ばれる米国留学帰りも多い。 中国では過去、優秀な頭脳の米国流出が多く、そのまま現地にとどまって米国企業に勤務したり、起業する若者が多かった。 このようなエリートに対して中国各地の経済特区の行政機関や企業は、住宅の提供など様々な優遇措置を講じて、Uターンを呼びかけている。

彼らは、おしなべて頭脳明晰であり、米国で進んだ技術やマネジメントを学んできている。 巨大な国内市場をもつ中国をベースに世界進出をねらっている起業家も多い。 こうした資本主義国中国に資本投下しているのは、世界各国の有力企業と、東南アジア諸国に移住している華僑であると言われる。 現在の中国は、極めて米国的な体制に変身した「中華合衆国」というのが大前さんの話である。 チャイニーズパワー恐るべしだ。  (4月17日)