10年ほど前だっただろうか、MITメディアラボ所長のネグロポンテさんの講演をきいたことがある。その中で通信と放送の未来について以下のような予言をされたのを今でもよく覚えている。
一つは、有線と無線の役割が逆転するというもの。 当時、すでにCATVはあったが、放送といえば大半が地上波だったし、通信では電話でもデータでも有線が常識であった。 そんな時に、近い将来、放送は有線、通信は無線が主体になるというのである。 その理由は次のようなものであった。 放送は、家庭でゆったりと楽しむのが主であり、これには大画面、高画質がいいが、伝送は無線である必要はない。 伝送方向は放送局から家庭への一方向であり、ディジタル化された光ファイバー伝送では超高速伝送ができるから有線がいい。一方、通信は、「いつでも、どこでも、誰とでも」できるのが本来的な姿だから、無線が理にかなっている。 伝送は双方向である必要があるが、放送のように高速大容量である必要はないというのである。
もう一つはパソコンについての予言だった。 近い将来、パソコンの価格は表示装置と電源によって決まるとのこと。 パソコンでは液晶ディスプレイが当たり前になり、携帯やPDAでの電池の高性能化が進んだ今では納得できるが、当時は、表示機器はブラウン管主体であり、携帯も普及していなかったことから本当かなと首をかしげる人が少なくなかった。
それから、ウェアラブルコンピュータがはやるともいっていた。 コンピュータ本体を洋服の中とかに埋め込んでしまうというもので、その電源は太陽電池でも、歩きながら充電するものでもいいと半ば冗談で話していた。 本当にアイデアやキャッチフレーズのうまい人である。 そういえば、昔、振ると充電されるという腕時計があった。文字盤は当然アナログ式であったが、すっかりなくなってしまった。 それだけ、最近の電池や表示機器の性能は驚くほど向上した。
近年、ウェアラブルコンピュータの研究者が少なくないようだ。 将来、これが普及するかどうかわからないが、先の2つの予言は現実のものになりつつある。 (4月15日