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    33. 「パーキンソンの法則」

わが国では、工場などの生産部門の生産性は極めて高い。 万国共通語にもなったカイゼン努力を続けてきたことで、生産現場での品質向上とコスト削減は極限レベルにまで達している。 広大な工場内ではロボットが24時間絶え間なく働き続ける。 一方、ラインの面倒を見る人間はほんの一握りという工場は珍しくない。

これに比べて管理部門の業務効率化はまだまだである。 多少の工夫をすれば一人でもできる仕事を何人もの人間がかかってやっている。 人がいるためにかえって仕事が捗らなかったり増えたりすることが多々ある。 いわゆる「パーキンソンの法則」である。 人がいることが新たな仕事を生み、管理組織が限りなく肥大化するという法則だ。 社内説明用に紙の山を作り、調整のための会議が延々と続く。紙の山を運ぶ人々イメージ

その典型が官庁の仕事だったかもしれない。 今はそうでもなくなったようだが、かつての霞ヶ関では「つきあい残業」が横行していたようだ。 急ぎの仕事がなくても上司を差し置いて早く帰るわけにはいかないし、お互い「あの課は暇だ」と見られたくないのである。

われわれ日本人が器用すぎるからという説もある。 お客や取引先との対応でも、手順書がなくても割合器用にこなしてしまう。 長い間、同じ会社にいるとお互いが「つーかー」の間柄になるので、細部まで文書で取り決めなくても仕事は進んできた。 給与も各人の職務内容でなく、職能という曖昧概念に結び付けられており、自分たちの職務内容をことさら明確に記述する必要もなかった。

経済の鎖国時代はこれでもよかったが、国境が事実上、消滅し、あらゆる面で競争が不可避になった今日、事態は一変している。 製造部門ではもはや当たり前の海外移転は金融、郵便、通信などサービス業においてさえ可能になってきた。 中国山東省のコールセンターでは、日本語を話すオペレータが日本全国の顧客からの電話に応対している。 最後の障壁と思われていた日本語の壁も、器用な中国人のおかげで崩れようとしている。

人件費の高いわが国では、社員一人が最大限、持てる能力を発揮しなければならない。 そのためには仕事にかかる人数を減らし、各人に思い切って仕事を任せるしかない。 それを管理するのは中間管理者であり、その役目は不要になるのではなく、益々重要になるのである。 (4月4日)