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    32. 「研究開発者とテレワーク」

テレワークには集中力を高めたり、創造力を刺激する効果があるが、これを最も活用できるのは企業の研究開発者であろう。 企業の研究所では実験や議論だけでなく、文書を読んだり作成したりするペーパーワークがかなり多い。 このような作業には、じっくり思考できる自分のスタールにあった場所があるといい。 場所を変えることで気分転換になり、新しいアイデアが生まれたり考えがまとまったりする。 1週間に1日か2日か特定曜日をテレワークデーに決めると、一週間分のペーパーワークをまとめて処理できる。

いくつかの先進的な企業の研究開発部門では、すでに、こうした形の在宅テレワークを導入している。 その際には、注意も必要である。 開発中製品などの機密情報を扱うことが多いから、情報管理を厳格に行う必要がある。 持ち出しやオンラインアクセスできる情報を制限したり、テレワークでできる作業内容を限定することになる。実験をする研究者イメージ

話はそれるが、NHKのプロジェクトXで池田敏雄さんという故人の逸話は興味深かった。 氏は「日本のコンピュータの生みの親」と言われている方である。 当時、富士通にてIBMを凌ぐ世界最高性能のコンピュータの心臓部の設計を担当していたが、その主たる仕事場はオフィスでなく自宅だったらしい。 開発が佳境のおり、主担当が出勤しないので心配になった社員が自宅を訪ねたら、部屋には模造紙大の紙に何枚にもわたって書き込まれた詳細な設計図があり驚いたとのこと。

当時の会社の規則には在宅勤務というような制度はなかったから、杓子定規にいえば無断欠勤だが、関係者の裁量で本人にこれを認めていたというからおおらかであった。

この話に限らず、科学技術でのブレイクスルーは、一人の独創によるところが大きい。 日本人には、独創性が少ないのではないかという議論がかつてあったがそんなことはない。

近年の日本人ノーベル賞の受賞者をみても、これが誤りであることがわかる。

企業の研究開発部門においては、異端児や変人が一種の称号であり、ことに基礎的な研究においては他人と違ったことをやるのがレゾンデートルでもある。 全ての人ではないだろうが、日本人のなかには、このようなDNAが生き続けている。 問題があるとすれば、我々の創造性発揮の機会を妨げている学校や企業の環境だろう。 テレワークのような柔軟な勤務形態の導入によって、ノーベル賞とはいかないまでも、企業の明日を切り開く事業の芽が見出される確率が高まるのではないだろうか。 (4月3日)