大都市のベッドタウンとして、昭和30年代後半より建設がはじまったニュータウンでは住民の高齢化が進んでいる。
同じ時期に似通った年齢層の世帯がまとまって入居し、その後の出入りが少ないため、年々、入居者の平均年齢が上昇していく。特に、戸建てや分譲住宅のように持ち家比率が高く、立地条件や生活環境に恵まれたニュータウンほど定住比率が高いから、高齢化の速度が速いという。
例えば、わが国ニュータウンのさきがけである大阪千里ニュータウンや東京多摩ニュータウン。 昭和30年代後半から40年代前半の入居開始から約40年が経過しており、初期に30歳代で入居した人々は60から70歳代になる。 高齢化は日本全体を覆う現象であるが、ニュータウンでは特にその高齢化の進行速度が速いのである。 加えてニュータウンでは、古くからの町村と比較して住民の生活パターンが大きく異なっている。 大都市のベッドタウンであるゆえに都市部への通勤者が多く、地元でのつきあいが少ない。 定年退職後に突然、悠々自適になるのはいいが、暇をもて余してしまう人々が多いという。 長い間、会社人間で休日も出勤や接待ゴルフという毎日であったから、社縁はあっても住居のある地元での地縁はほとんどない。 このため、お金や時間があっても精神的な不安を訴える人が少なくない。
高齢化が進むニュータウンでは、公立小中学校の統廃合による閉校や、閉校に至らないまでも空き教室の増加がみられる。 また、徒歩で日常の買い物ができるように街区ごとに設置された近隣センターでは空き店舗が目立つようになった。 顧客の嗜好の変化やモータリゼーションの影響で廃業に追い込まれてしまうのである。 ニュータウンは今や「オールドタウン」になりかけている。
ニュータウン住民によるアンケートでは、高齢者にやさしい街づくりへの期待が高まっており、それに向けた取り組みが徐々にではあるが始まっている。
遊休施設を地域住民の交流の場や仕事や学習の場として活用することは、「オールドタウン」問題に対する一つの方策である。 高速インターネットなどの情報通信機能を備えたテレワークセンターや自習スペースにも可能性があると思われる。 高齢者だけでなく、育児や介護などにより遠距離通勤が困難な女性にもニーズがあるだろう。
地方自治体の強力な支援が不可欠であるが、新たな「はこもの」を作る必要はない。 住民参加による運営など利用者の目線での取り組みによって住民本位のサービス提供ができるものと思われる。 (4月1日)