テレビ電話が次世代通信のキラーアプリケーションといわれ久しいが、普及は進んでいない。 ドコモのFOMAは、このテレビ電話機能を一つの目玉にして登場したが、使っている人は少ない。 FOMA苦戦の原因はそのほかに色々あるが、テレビ電話が期待外れであるというのも一因であろう。
声だけでなく顔が出て表情がわかるというのが電話の次にくる通信だろうと誰しも思うところではある。 しかしなかなかそうはならないのは、実際に使ってみるとわかる気がする。 一つはわれわれの体の構造に関係していること。音声だけの通信では耳と口の両方に届く電話機でいいが、テレビ電話となると顔を写すために一定の距離がいる。電話機本体にカメラをつけると、耳にはイヤホーンのような有線でつなぐか無線でつなぐ必要がでてくる。
それから料金の問題である。音声に加えて顔が映ることで通信に必要な情報量が格段に増加する。少なくとも4−5倍、あるいは10倍位が必要となる。情報量(ビット)に応じて課金をすると、通常の電話料金に比べてべらぼうに高くなってしまう。 そこで、電話会社は情報量に比例する料金でなく、効用を重視した料金を考えるが、そもそも顔が映ることによる付加価値がどれほどのものかが問題になるのである。
はっきりいって情報伝達という面では、顔が映ったから情報が何倍も多く得られるという場面は少ない。 逆に余計なことが気になってしまい、肝心な情報伝達がおろそかになってしまったりする。
TVでは友達同士やおじいちゃんおばあちゃんと孫との会話など親近感を生むシーンを盛んにPRしている。確かにこうしたニーズはあるし、常に新しい市場を創造してきた中高生たちの「遊び心」を刺激する可能性はある。
TV電話の普及には、料金のほか電話端末、それに利用シーンについて更なる工夫が必要なのかもしれない。 (3月14日)