テレワーク先進国のアメリカでは現在、連邦政府の職員にテレワークを勧める法律を策定して官の側からテレワーク導入を推進している。
米国のワーカーは日本と違って、各人の仕事が明確になっており、IT化や文書化も進んでいるから進めやすいという違いがある。 加えて連邦政府機関の集中するワシントン周辺は、交通渋滞が全米でも最もひどい地域である。 カープールと呼ぶ乗り合いを進めたり、ラッシュアワーでの一人乗りを禁止する車線(HOV:High Occupancy Vehicle)を採用したりしてはいるが、朝晩の渋滞は一向に改善しない。 自宅には書斎あるいはDENという個室を持つ者にとっては自宅で仕事をする方が能率があがるのである。
一昨年と昨年の2回、約2百万人にのぼる全連邦機関別にテレワーカー数を報告しているが、第2回目の調査では、連邦機関職員のテレワーク数が急増している。 これには、法律制定を契機に各連邦機関の間での情報交換を進めるなどの横連携が進んでいるためである。 一つは、テレワークポリシーの策定であり、現在ではほぼ全ての省庁がこれを策定したと報告している。 また、テレワーカー本人やその上司への教育研修を重視し、そのためのポータルサイトやeラーニングコースを整えている。
調査では、2週間に一日以上を自宅など、所属するオフィス以外の場所にて仕事をする者をテレワーカーとしている。 各省庁別にみると、最も職員数の多いのは68万人の国防総省(DOD)であり、このうち1万人がテレワーカーである。 最もテレワーカー人口が多い省庁は財務省であり、15万人の全職員のうち3万5千人がテレワーカーで、その比率は23%になる。この財務省にはわが国の税務署にあたるIRS (Internal Revenue
Service)が含まれるから、その職員たちも週に1日とか2日を自宅にて仕事をしているのだろう。 米国ではサラリーマンも個人で申告するから、何かと地元の税務署に出向く機会が多いが、徴税事務や調査などは職員の個々人で閉じている仕事が多い。 連絡や通信も電話やパソコンがあれば、別に事務所でなくても事足りる。 勿論、機密情報や顧客データの取り扱いに注意が必要であるが、その点は十分な配慮がされているに違いない。
わが国の官公庁でも、事務合理化の観点などから、テレワーク推進すべきである。 その端緒になるような動きが特許庁などで始まっているらしい。 なるほど、特許の審査は担当官が個人個人でする仕事がほとんどだから、別に一箇所に集まって仕事をしなくてもいい。 勿論、情報の取り扱いには十分な配慮が必要であるが、米国のようにポリシーを決め、研修などを行うことをすればそれほど難しい話ではなさそうだ。
これによって、平均2時間の毎日の通勤時間がなくなるから、時間的にも体力的にも余裕が生まれ、労働人口が減少する社会に適したワークライフバランスがとれるに違いない。
(12月7日)