複合汚染とか若年の体力低下などで人間の寿命はこれ以上伸びないのではないかと言われたことがあったが、まだまだ伸びるらしい。 少なくともわが国の平均寿命は堅調な増加を示している。 ことに女性は1年で約0.2歳の割合で単調に増加しているので、国連の関係機関は、2050年頃になると日本女性の平均寿命は92歳に達するとしている。
このように寿命が延びているのは、当然ながら医学や生理学の進歩が大きい。 特に近年はヒトゲノムなどの研究に代表される遺伝子レベルの研究が急速に進んでいる。 癌などの病気がおこる仕組みに加えて、人間の老化のメカニズムが解明され始め、老化を遅くする方法が見つけられる可能性も出てきたようだ。
「とりあえず、150歳くらいまで間違いなく延びると思います。」というのは、遺伝子研究家でジーンケア研究所代表取締役を務める古市泰宏博士。 以前、アゴラというJALの雑誌のインタビュー記事で述べていた。
老化とは、細胞分裂のたびにDNAに傷が多くなって、しまいには修復不可能になる現象であるが、ヘリカーゼという酵素が重要な役割を果たしており、この酵素が少ないとDNAが非常に不安定となり傷つきやすくなることがわかってきたとのこと。 そこで、博士はこのヘリカーゼを増進させる、つまり老化を遅らせる薬を作る研究をしている。
このようなことができると来世紀には平均寿命は百歳、つまり今年生まれた子供のほぼ2人に1人は百歳まで生きることになるのであろう。
そうなると我々の教育や労働は更に根本的な見直しを迫られる。 20歳そこそこまでで学ぶことは一生涯から見るとわずかであるから、自ら進んで学ぶ姿勢が重要になる。 労働も同じである。 聖路加病院理事長の日野原重明さんは75歳からを「新老人」と定義しているが、人生を25年の四半世紀づつに区切り、どのようなスタイルでもいいからとりあえず75歳までは働くのが常識という時代になるのであろう。(11月24日)