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    118. 「e-Japanのかたち」

先日、社団法人日本テレワーク協会主催の「e-Japan戦略IIが目指す21世紀社会」シンポジウムでのお話。

e-Japan戦略IIでは、進んだ情報通信インフラの上で、我々の暮らしが実際にどのように便利になるかが実感できるように、利用方法の進歩拡大を目指している。 そこで医療、食、生活、中小企業金融、知、就労・労働、行政サービスという生活密着型の7分野をあげ、具体的な取り組みを行うとしている。田舎の風景イメージ

このシンポジウムでの中心テーマは、このうち就労・労働面、とりわけテレワーク環境の整備である。 わが国のテレワーク人口は約400万人、全就労者の6%といわれているが、e-Japan戦略IIでは2010年に、このテレワーク人口を全就労者の20%に増加させるという目標を掲げている。 具体的な目標を数値で示しているのは先日の衆議院選挙のマニュフェストのごとく、大変結構なのではあるが、一方、その時点におけるテレワーカーの実像が今ひとつ見えてこない。 IT活用で場所や時間にとらわれない労働ができるというテレワークをすることによって、我々の労働や暮らしがいかに便利で豊かになるかがいささか不明確なのである。

この点に関連して今回のシンポジウムでは、いくつか参考になる点があった。 中でも富士通の高島専務が講演の冒頭、一つの具体像として紹介した和歌山在住の館さんという女性のエッセイに興味を持った。 これは、日本テレワーク協会が行った「働く女性のエッセイコンテスト」の最優秀賞に輝いた作品であり、以下のページにて閲覧したところ、次のようなことが書かれている。

http://www.japan-telework.or.jp/tw/tw_news019.html        

現在、幼いお子さん二人とともに、大阪府吹田市より和歌山県の龍神村という山奥に移り住み、つい最近習得したパソコンを駆使して、テープ起こしの仕事をしているという。 テープ起こしとは、会議等の録音テープをパソコンを使って文章化する仕事である。

確かにこうした仕事はパソコンとインターネットのおかげで、別に都会のオフィスでなくても在宅でできる仕事である。 ただ、単調できつい仕事のように思われるのだが、結構楽しくできることがあるという。 例えば、自治体の議会の議事録作りなどの作業は、質問者と答弁者のやりとりがへたなドラマよりずっと、おもしろいという。 この和歌山県の山村にはこうした若い家庭は少ないから生活面ではさぞかし不便のように思うが、そうではなく近隣の人が何かと助けてくれるらしい。 それに家賃は安いし、庭付き畑つきで、加えて、隣が高齢者福祉センターで温泉を一般開放しているので、「隣が温泉」という素晴らしい環境とのこと。 そしてエッセイの最後では、「ここを安住の地とできるよう地域に溶け込みたい」と書いている。

少子高齢化、そして過疎過密問題は今世紀わが国が抱える最大の問題である。 e-Japanが目指す一つのかたちは、講演者が言われたように、なるほどこのようものであるに違いない。 (11月18日)