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    116. 「悪いのは成果主義か」

近頃、「成果主義の崩壊」という見出しの週刊誌記事などで成果主義が悪者扱いされているように見受けられる。 しかし、かといって旧来の年功序列型の賃金体系に逆戻りするわけにはいかない。 悪いのは成果主義でなく、それを運用する制度やマネジメントが悪いのである。 先日の報道によると、日立製作所は定期昇給制度をやめ、若年層を含め、成果にもとづく給与体系に全面移行するとのこと。 業務内容の変化、地球規模での競争激化、更に若年労働者の減少を考えると当然のなりゆきである。

現在、成果主義のツールとして最もよく利用されているのは目標管理制度であり、東証一部上場企業の約7割で導入されているという。 実は、この制度の作り方やその運用方法が最大の問題のように思われる。温暖化する地球イメージ

目標管理制度では、年度などのはじめに上司と相談のうえで立てた個人別の目標の達成度合いに応じて評価がなされ、それが賃金に反映されるという仕組みである。 この考え方自身は当たり前なのであるが、実際に運用してみると難しい点がいくつかある。 まず、営業部門のように販売数などで数値的な目標が立て易い部門はいいが、ルーチンワークが多い部門ではチャレンジングな目標がたてにくい。また、目標の達成度が重視されることになるので、目標設定の際には、いきおい達成されやすい無難な短期的目標を立てるようになる。 なかには、「後だしジャンケン」といって、成果をとっておいて、後で報告するという悪知恵を使う者もいるらしい。

これでは、本来の制度導入の目的と異なるどころか、全く逆効果である。 問題は目標管理制度の運用が画一的過ぎる点にあるのだろう。 とかく人事部は、全社共通に適用される新しい制度をつくりだすが、自らが作った制度の不備や欠陥を認めようとしない習性がある。 現場のそれぞれの実態にあわせて中間管理者の裁量の余地をより大きくするとともに、チームワークやプロセスが反映されるようなければならない。  チームワークとリーダーシップの重要性が高まっているから、チーム内の評価については、上司の考え方が反映され、上司の主観が入るのはやむをえない。 問題は部下がその評価結果に納得できるかである。このために上司はおりにふれて何を重視しているかを伝える必要があるだろう。 透明性という名のもとで達成度と評価が機械的にリンクされ、動きがとれないとかえって白々しくなるものである。 苦情申し立ての手続きがあり、それが健全に運用されることも重要である。

会社全体、チーム、それに個人の業績がバランスして評価されることが理想的である。 終身雇用型では、頻繁な人事異動は、部下と上司の関係を一定期間ごとに清算する効果を持っていた。 しばらくすれば上司も変わるから、長い間を平均すれば恨みっこなしということもある。  チーム同士で競いあわせるようなチームワークを主体とした組織デザインと、中間管理職に多くの権限をもたせることが重要と考えている。 (11月11日)