元経済企画庁長官で作家の堺屋太一さんが以前、NHK教育テレビのある番組で、これからの日本と日本人について興味深い話をしていた。
これまでの工業中心の社会は工場やオフィスまで遠距離通勤があたりまえの職住分離型であったが、情報や知恵が重要になるこれからの社会では、その必要がなくなり、「歩ける距離になんでもある」職住接近型の社会になる。そうなると自分たちのまちをくらしに便利で安全なものにしたいという欲求が高まるので、現在より住みやすいものに変わっていくに違いないとのこと。それから、レストランのメニューに限らず、現在、巷にある商品やサービスのほとんどは若者向けにできており老人が楽しめるものは少ないという。 老人が生活を楽しめ、誇りをもてる社会にすることが今後の少子高齢化社会にむけて大事であり、世の中の景気をよくすることにもつながるというのである。
日本人は老後に不安があるとするものが多いが、実のところ、欧米と比較しても、貯蓄額は多いし、健康保険や年金などの制度は整備されている。 それなのに不安を感じて貯蓄に励むのは、生活を楽しめるようなお金の使い途が少ないからなのであろう。 21世紀の日本は、高齢化だけでなく少子化により人口が減少する世紀でもある。若者人口が減って高齢者が多くなるということは、国力衰退につながる危機である。
しかし、過去の歴史でこのような危機を乗り越えた例があるという。 それは15−6世紀のイタリアであり、なんでも疫病などで百数十年間で人口が四割も減少したが、その間にルネッサンスが興った。 人口減少には、効率の悪い産業が衰えるから生産性があがるという面と人々に余裕ができるという良い面もある。
シニア、ことに「団塊の世代」は、今後、極めて大きな市場であることはまちがいがない。シニアのための商品やサービスの開発は、シニア自身の方がうまくいくものが少なくないのではないか。 若者にまかせておくのはもったいない話である。 (11月7日)