eラーニングが普及してくると、子供たちの学校の授業にも変化が迫られる。 一方的な知識の伝達は、これに長けた講師陣によるeラーニングにまかせ、学校ではディスカションやグループ学習を通じた共同生活での知恵の体得など、eラーニングでは行えない双方向型の授業が中心になるであろう。 その点、米国の小中学校の授業が参考になる点が多い。 例えば、プレゼンテーションの授業。
例をあげると、子供が通っていた小学校では次のようなプロジェクトがあった。 どんなものでもいいから30秒のテレビコマーシャルを作って、皆の前で発表するというものである。 題材となる商品やサービスは全く自由に決めてよい。 制限時間は30秒である。この時間内にきっちりとメッセージを伝え、完結するものでなくてはいけない。 TVコマーシャルであるから、ビジュアルでわかりやすくプレゼンテーションする必要がある。 その商品自体を持ってくるのも自由である。
このようなプロジェクトが小学校であるとは知らなかったことから、息子だけでなく私たち親も面食らってしまった。それでも、どうにか工夫してなんとかできるものである。 うちの子供の場合、日本の文房具である下敷きを宣伝することにしたようだ。 米国の小学校では、日本では当たり前の下敷きというのを使わない。 下敷きを使うと、きれいに字が書けるし、それに、下敷き自体がカラフルで色々なデザインがあるのに、スーパーや文具店では見たことがない。
こうした商品説明を30秒にまとめて、それを本人自身がタレントになってプレゼンすることになる。 勿論、英語であるから、日本人の場合、作文には親も協力することになるが問題はプレゼン(発表)である。
このプレゼンについて先生からもらった課題のプリントには、次のような注意が書かれていた。
・明瞭簡潔に話すこと。
・皆の方を向いて、表情や表現豊かに話すこと。
・このために商品自体をうまく使ってよい。
・長くても短くてもいけない。
プレゼンとしては当たり前のことであるが慣れないと大変難しい。 特に、日本人には、2つ目の点、すなわち、聴衆に向かって表情豊かに説明するというのは苦手である。 英語を暗記して話すだけでも大変であるのに、明るく楽しく、時には身振り手振りをつかって話すなどというのは、とてもできっこない芸当である。 そこで、少しでも恥ずかしくないようにするため、自宅で、ストップウォッチをもった私たちを観客にして、何度も練習させた。 結局、学校ではなんとかなったようである。
プレゼンでは、先生だけでなく、観衆である生徒も採点者になったとのこと。 わかりやすく、印象的なCMであったか、どういう点が良かったか等を採点する。時間制限のポイントは25秒から30秒の間は満点とのこと。これを超えたり、短くなると点数が下がるという仕掛けである。
子供たちのプレゼンは実に様々であったらしい。コーラを1缶もって現れ、そのセンをぐいっと抜いて飲み干す、そしてにっこり笑って一言というようなものとか、テレビショッピングにあるように家庭用品の良いところをオーバーにまくしたてるものとか。子供の頃からこうした授業で鍛えられてきたビジネスマンに我々が対抗するのは大変なことに違いない。 (3月12日)